TECHNOLOGY
パワー半導体デバイス
半導体デバイスと聞くと、メモリやCPUに代表される集積回路
を連想することが一般的かと思われますが、この分野(パワーエレクトロニクス)では、電力をあつかうパワー半導体デバイスが主役です。
電圧は数十V(ボルト)から数kV印加まで、また、電流は数Aから数百Aまで流せるパワー半導体デバイスが登場しており、電力の変換が必要なさまざまなシチュエーションで、回路を構成する重要なデバイスとして利用されています。代表的なデバイスとし、ダイオードやバイポーラトランジスタ、MOSFET(Metal Oxide Field Effect Transitor)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transisotr)などがあります。
半導体電力変換回路
半導体パワーデバイスを利用した電力変換回路です。一般的には、コンデンサ、磁気部品と組み合わせ、パワー半導体デバイスを制御することにより、電力の変換を行います。
変換の種類は大きく4種類に分類され、直流-直流(DC/DC)、直流-交流(DC/AC)、交流/直流(AC/DC)、交流-交流(AC/AC)があります。
一方で、電力を変換する際、回路を構成する半導体パワーデバイスおよびその他部品から損失が発生します。半導体電力変換回路の研究開発では、この損失を可能な限り低減し、変換効率を上げるかが、重要な技術開発要素となります。
また、半導体電力変換回路では、単位時間あたりにパワー半導体デバイスを動かす回数のことをスイッチング周波数と呼びます。このスイッチング周波数を高くすると、回路を構成する磁気部品やコンデンサを小さくすることができるため、搭載スペースが限られている自動車や、小型・軽量性が求められるモバイル機器向けの回路では、高周波化による小型化も重要な開発要素となります。
SiC/GaNパワーデバイス
SiCおよびGaN半導体材料を利用したパワー半導体デバイスの開発が盛んになりはじめた2000年代当初より、従来のSi材料を用いたデバイスと比較するかたちで、これらデバイスを「次世代半導体デバイス」と呼ぶようになりました。
SiC, GaN半導体は、(Si半導体に比べ)材料の絶縁性が失われる電界強度が高く、数百V(ボルト)以上の耐電圧特性を持ったパワー半導体デバイスを、より高性能に作ることが可能となります。
近年では、750V ~ 数kV耐圧のSiCパワー半導体デバイスが量産されるようになり、車載電力変換回路にも採用されるようになってきました。また、数百V耐圧のGaNパワー半導体デバイスも、SiCに次いで市販されるようになっており、モバイル機器向けの充電器に採用されはじめています。
これら次世代半導体デバイスは、高速性(スイッチのオンオフが高速)・低オン抵抗性(オン状態の抵抗値が小さい)に優れており、半導体電力変換回路で重要な「損失」を低減し、高効率な変換を可能とします。また、高速であることは、スイッチング周波数の高周波化を容易にし、電力変換回路の小型化が期待できます。